大理石キッチンの横浜H邸のお客さまから、リビングダイニングキッチンの仕上げ材は、大理石以外はグレー調のフローリングやパネルにするのはどうだろうかとのご連絡を、Hさまお手製のCGと一緒に頂きました。
これまでは明るめのオーク色のフローリングのイメージだったものが、かなりシックにガラリと変わってきました。オークのフレンチヘリンボーンであれば、何とかなると気楽に構えていましたが、グレーのフレンチへリンボーンはこれまで使ったことも見たこともなかったので、そのようなものが実際にあるのかを急ぎで調べることとなりました。
まず最初に伺ったのは南青山のIOCさんです。ヘリンボーンだけでなく、フレンチヘリンボーンの品揃えもあり、かつグレー系のフローリングを得意としているのです。
ザ・ライブラリーメンバーの田口と各務、岸本と竹田の4人でショールームを訪問すると、床にフレンチヘリンボーンのサンプルを並べておいてくれました。
オーダー調色が得意なIOCなので、グレー調のフローリングも横に並べてくれており、オーク材をベースにすれば、これらのような色味のフレンチヘリンボーンを特注で作ってもらうことが可能であることを説明してもらいました。
折角4人揃っていたので、その足で歩いて10分ほどのところにあるiKUTA(イクタ)のショールームも訪問いたしました。
iKUTAはヘリンボーンが日本で流行る前兆があった頃から、フレンチヘリンボーンのフローリング材に取り組んでいた草分け的な存在です。フローリングを張る際に逃げが無く、フローリング自体の寸法もかなりの精度での正確さが求められ、かつそれを張る大工の腕も求められるので、フレンチヘリンボーンは普通のフローリングより2段階くらい上の存在なのです。
壁に展示されているこれらの色味であれば、フレンチヘリンボーンに採用できることのことでした。
パッとみると、Hさまのお好みのイメージに合いそうなのですが、見比べてみると微妙に違っていました。IOCは特注での調色が可能ですが、iKUTAは調色は難しいとのことでした。
とはいえ、IOCとiKUTA、そして加えてもう一社東京工営さんのフレンチヘリンボーンのサンプルも集まってきたので、その3社のフローリングサンプルをお客さまのHさまに見比べて貰うことになりました。
手前に置かれているのが、各社から集めたフローリングの色見本です。奥に置かれているのがお客さまがご購入検討中の輸入物のラグのサンプルなのですが、厚手のしっかりとしたラグと見比べると、手前のフローリングの色は如何にも着色したもののように見えてしまうので、もう少し深い色味のフローリング材サンプルも見てみたいとのことで…、
岸本さんが大量にあるフローリング材のサンプル在庫の山の中から色々なものを掘り出してきてくれました。
このくらいの色味の濃いものであれば、ラグともうまくマッチしてくれそうだとのことになりました。因みにこちらはIOCのビザンツシリーズのフローリングサンプルでしたが、すでに廃盤になっている製品でした。もう一つ気に入ってくださったのは、リストネ・ジョルダーノ(ADワールド)のフローリングでした。どちらも着色ではなく、燻蒸(クンジョウ)という手法を使って色を付けているものでした。燻蒸は、アンモニア処理のことで、木材そのものが含むタンニンとアンモニアは反応することで、色味は深くなるのですが、木目部分はかえって白く浮かんでくる特徴があります。ただ、木材のタンニンの量とアンモニア燻蒸の時間によって、色味が変わってくるので、色味をコントロールすることが難しくIOCではビザンツシリーズを廃盤にすることになってしまったそうです。
このような深い色味のことになると、着色のことに詳しい望造の江野社長の登場です。IOCは中国での着色で、細かいニュアンスが伝わりにくいのに対して、望造は日本国内で調色をしてくれるので、スピードも早く、かつこちらのニュアンスをうまく拾ってくれるフルーリング会社なのです。候補となる2つのフローリングのサンプル写真をお見せしただけで、参考になりそうな色味に着色をしたフローリングを何枚も持ってきてくれました。
サンプルをお見せしたところ、すぐに燻蒸処理をしたものであることを理解してくれました。燻蒸も望造ではして貰えるのですが、やはり色味のコントロールが難しい(つまり同じような材を何枚も同じ時間で燻蒸しても、色味のバラツキが出てしまう)のとフローリングの燻蒸処理は国内では難しいのと時間がかなり掛かってしまうので、まずは鉄媒染という手法を使って似たような色味のものができないか挑戦させて貰えないかとのことになりました。因みに鉄媒染とは、草木染の一種で、鉄分を多く含んだ媒染液を使って、木のタンニンと化学反応させることで、深い色味を出す染め方だとのことです。
リストネジョルダーノを扱っているADワールドも、フレンチヘリンボーンで使えるサンプルを出してくれることになっており、東京工営とIOCも新しいイメージでサンプルにトライしてくれることになったので、次回の打ち合わせ時までには色味の深いHさま好みのサンプルを幾つか揃えることができそうです。