既に工事着工している横浜H邸ですが、話が前後しますが、着工前に順次決めていったディテールについての記事となります。
完成写真ではほとんど伝わらない「着工前のディテール決定プロセス」についての話となります。取っ手一本、モールディング一本をどうやって決めているのか──その現場をそのまま記録してみました。

クラシカルなモールディングデザイン空間に大理石張りのモダンなキッチンが入るお宅なので、建具の取っ手や造作家具のつまみは、クラシカルなものから選びたいとのこと、アメリカ産の輸入取っ手やつまみが豊富にあるジェイマックスの代々木上原ショールームにHさまと一緒に伺って参りました。クラシカルな要素とモダンデザインをミックスする場合、どこまでクラシカルな部分い拘るかはかなりデザイン的に難しい判断となるのです。

ドアノブやレバーハンドルは実際に握って動作を確認して頂くのが一番安全なので、Hさまにデザイン的に気に入って頂いた取っ手類は全て試して頂きました。

造作家具のつまみや取っ手類も同じデザインでも違う仕上げのものが多数展示されているので、PDFカタログを見比べるのと比較してもスピーディーにお気に入りのものを選び出して頂くことができました。

モールディングやケーシングもあまりカーヴィーなものではなく、アールデコ調でストレートなものが良いとのこと、特に壁と天井のモールディングは階段状になるように二つのモールディングを組み合わせることとなりました。

モデュール家具のGIGIでお願いしているスチールとガラスを組み合わせた造作棚についても、細かい使い勝手とデザインの最終確認をさせて頂きました。

仕上材サンプル一式をGIGIから借りて、弊社事務所でお打合せをして…、

このように立体的に組み合わせて、同じように見える黒い素材でも素材感やツヤ感などを見比べながらベストマッチを探して行きました。

実はこの打合せを経て、仮決めで入れていた素材はほぼすべて交換することになりました!ショールームで個別に見て考えた仮決め素材が、他の素材と合わせて考えてゆくことで逆転したことは、Hさまにもかなりの驚きだったようです。

家具の最終サイズ確認では、Hさまに実際に立って頂き、「このくらいの高さが使いやすいのでは」とアドバイスしながら、巻き尺で一段ずつ高さを確認していきました。

浴室の扉も当初は一般的なステンレスヘアライン枠に強化ガラスという組み合わせでしたが、GIGIの黒い家具と同じようになさりたいとのこと、黒く塗装した角材を組み合わせた框扉仕様となりました。

打合せテーブル手前にある、ちょっとアヴァンギャルドなデザインの建具は、残念ながら中止となり、ホテルのスイートルームのように、LDKと寝室は間仕切り無しで繋がることとなりました。

当初はLDのヘリンボーンフローリングは単板厚突き仕様でしたが、無垢材で作りたいとのこと、ここまでサンプル作成で協力してくれている望造さんにお願いして、無垢材の塗装サンプルを作ってもらいました。

最後のこちらは、洗面の水栓とボウルの使い勝手の確認です。水栓とボウルを同じブランドでお願いすれば、水撥ねなどのマッチングを確認して貰えるのですが、今回はお客さまの選択でそれぞれ別のブランドとなってしまったので、実寸大の模型を担当のスタッフの岸本さんが作って新事務所のトイレの壁に貼って使い勝手をシミュレーションしてみました。

手前の段ボール製のものが壁出し水栓のモックアップ模型となります。ディテールの検討は、図面やカタログだけでは決まりませんね。
触って、比べて、疑って、やり直すことの積み重ねでデザインが決まってゆくのです。

