ザ・ライブラリーでは高性能CGソフトを使って、かなり実物に近いコンピューター・グラフィック(いわゆるCG)を作って、お客さまとのデザイン検討や素材打ち合わせに活用しています。打ち合わせ中に作ったCGも、打ち合わせの流れの中で素材が変わったり、家具を変更した場合、それも最新版にアップデートしながらお客さまに3Dで確認して頂けるように準備をしています。そんな施工前に作られたCGと、リノベーション工事が完成した後に撮影した実物写真の違いを、ブログで比較考察してみましょう。

 

こちらはCGです。これだけを見るとかなり素材感があり、正面壁の大理石調タイルの質感や、床に敷いたラグの凹凸感まで表現されていますね。今回の千代田区O邸の打ち合わせは、まだ建物が完成する前からスタートしていましたので、実物としては何もない段階で、ここまで具体的なCGで打ち合わせをできたことは、お客さまのOさまご夫妻もとても喜んでくださいました。

 

そしてこちらは完成後の実物写真です。当然ながら造作家具の木目やソファのクッションファブリックの質感がより高く、さらに細かく見てゆくとダイニングテーブル上の照明の煌めきや、植栽の影の表現なども奥行き感がありますね。

 

 

因みに、同じようなリアルな空間の写真でも、こちらは人工照明を全て消して、窓からの自然光だけで撮影してみた写真です。素材の色味や質感は一番良く表現できますが、光が届きにくい部屋の奥の空間は色彩が乏しく、少し寂しい雰囲気の写真になってしまいます。つまり、リアルな写真といっても撮り方によっては全く違った雰囲気にもなるのです。

同じ空間をリビング側からダイニング側を見返したアングルのCGです。一度リアルな写真を見た後だと、リビングのラウンジチェアのファブリックの張地が固くて偽物っぽく見えてきますね。手前左側のテーブル上の雑誌や、左側壁面のワインセラーやカウンター上の小物があることでリアル間を補強してくれていますが、やはりちょっと何かが足りない感じがしますね…。

ほぼ同じアングルの実物写真です。写真も実はRAWデータで撮影したものを、歪みの補正や色味をなるべく肉眼で見たものに近づけるためにフォトショップのライトルームソフトでかなり補正しています。CGと見比べると、壁や天井の色味が複雑で、ラウンジチェアのファブリックのニュアンスや、影が重なった部分や折り下げ天井の鏡張り箇所などのディテール感もリアル写真の方が数段リアルですね。

因みに、こちらの写真は、NIKONの一眼レフカメラD7500に超広角ズームレンズのAF-P DX NIKKOR 10-20mm f/4.5-5.6G VRをつけて撮影した「加工なしの生写真」です。そういった意味でもホームページやブログにのせている実例写真もリアルと言いつつも、歪みや明るさ、色味などを調整しているので、かなりの加工臭がしますね(笑)。

テレビがある壁の反対側のワインコーナー側を見たCGです。ワインコーナーの吊戸棚のガラスに映り込んだダイニングのペンダント照明やソファのクッションなどもかなりリアルに感じますが…、

リアル写真を見比べると、なぜか深みが無く、平板に感じられますね。写真も一眼レフカメラの絞りをかなり絞っているので手前にも奥にもピントが合っているところは、少々不自然ですが、CGも全てのピントがあってしまっていることや、影の暗さの表現がまだ甘い気がしますね。ダイニングチェアの影の重なりを見比べるとかなり違いますね。

 

小物が多く映り込んで生活感が少し感じられるようなアングルのCGで比較してみましょう。テーブル上でのスープセットとカトラリーとグラスは、あまり時間を掛けずにデータが重たくならないような作りなので、却って嘘っぽくなって見えていますね。順光よりもこの写真のように逆光の方が、壁の大理石張りや植栽などは少しリアルに感じられるようですが…、

 

ほぼ同じアングルの実物写真と比べると、やはりちょっと物足りないですね。ザ・ライブラリーで使っているCGソフトはD5レンダラーというレンダリングソフトを使っています。CGの画像のクオリティーに特化したソフトというより、リアルタイムレンダリングが可能なソフトで、設計打ち合わせをしながら随時見たい箇所を確認しつつ打ち合わせを進めることができることを重視して採用しているものです。フォトリアルだけを追求するのであれば、他のソフトでもっとリアルなものもあるのでしょうが、ザ・ライブラリーはプロのCG屋さんではなく、プロの設計・施工チームですので、設計のプロセスでどこまでCGを活用できるかに注視しているので、これ以上のフォトリアルさにチャレンジする必要は今の時点ではないと考えています。

もう少し素材数が少なく、シンプルな空間でのCGとリアル写真の比較も続けてみましょう。こちらは白黒の素材に鏡や鏡面仕上げの扉材が加わった洗面所のCGです。タオルやカウンター上の小物やハンガーもあって、それなりにリアルに感じますね。

しかし、こちらのリアル写真と比べると光沢感のある素材に映り込む周辺環境や、微妙に色味や反射が違う素材からの反射光などによって色の幅が生まれる部分がCGにはないことで、やはり深みに欠けていることが判りますね。

こちらは玄関ホールのCGです。ニッチになった部分に張ったカラーガラスの奥行き感やカラーガラスと鏡の映り込みなど、相当良い出来だと思っています。

こちらは実物の写真です。CGでは偽物っぽかった床大理石が、この写真だと本物の大理石を使っていることが判ります。カラーガラスのガラスの厚みの表現などは、おそらくCGでも時間を掛ければそれなりに実現できるでしょうが、CG作業に掛ける時間とリアルさのバランスを考えると、このCGで十分だと思われます。

最後に、お子さまの部屋の造作家具のCGです。お部屋の一番奥のコンパクトなお部屋ですが、ご子息が友だちを連れてきたくなるようなカッコよい空間にしたいとのリクエストで、ダークなウォールナットとガンメタル色のメラミンをイメージしてデザインした造作家具がこちらです。

こちらがリアルな子ども部屋です。窓の景色はモザイクを掛けていますが、窓の外の緑が部屋の中に入り込んできている様子はCGではまだまだですが、それでもお子さまとの打合せであれば、十分以上の説得力があるCGができているだろうと思っています。

さらにCGの場合は、ベッドや勉強机を置いたらどうなるかのイメージまで確認することができます。CGは設計図と簡単な仕様書さえあれば、現実には何もない状態から完成予想図を一気に作ることができるところが、とにかく優れたツールです。お客さまも読み解くのにそれなりの技術が必要な図面や、スケッチパースや模型などに比べて、直感的に空間を理解することができるという点では、CGに勝るものはないと言えるかもしれません。さらに家具やカーテン、ペンダント照明といった備品がマッチするかを確認するにも適しています(ただし、家具等はメーカーが3Dデータを出していることが重要です)。CGを使ってのプレゼンテーションは、ザ・ライブラリーの一つの重要な要素ですので、これからも使い方やソフトを工夫しつつ、活用していきたいと考えています。