メゾネットマンションリノベーションの中央区S邸は、設計のスピード感とコロナ禍でのスタート準備のため、下階と上階で設計及び施工を2つのフェーズに分けて行っています。下階でのペンディング事項(未決事項)がほぼ無くなり、造作家具の取り付けが始まったタイミングで、上階の設計に取り掛かっています。
メゾネット上階フロアのデザインで目玉となるのはフリースタンディングバスのある水回りです。フリースタンディングバスとは、浴槽を壁や袖壁の中に埋め込まず、仕上がった部屋の中にまるで家具のように据え付けるタイプの浴槽のことです。
今回はリノベーション前の水回りから位置を移動して、洋室だった部屋一室すべてを水回りにする構成となっています。このアイデアは当初からお客さまが持っていたお考えで、初めて伺ったときには、使い勝手の面や、排水の水勾配(床下の排水管の水を淀みなくスムーズに流す勾配)や換気扇のルートのことなどで、実現性は乏しいのではと思っていました。ただ、その後やはりフリースタンディングバスを使っている今のお住まいを拝見したり、Sさまの強い想いを幾度も伺ううちに、何としてもやり遂げたいタスクの一つへと昇華してきました。
とはいえ、洋室1室分の広さの水回りの床すべてをオーダーユニットの防水パンで作ったり、在来工法の防水層を作るのは予算的にも厳しいので、どこまでを防水エリアとして、どのように見切るのかをSさまと何度も打合せをさせて頂きました。
浴槽がフリースタンディングなだけでなく、ダブルボウルのある洗面カウンターも部屋の中央に置いて、周囲を回遊できるようになさりたいとのこと、現地の実寸を見ながら、かなり細かい設計を進めています。
浴槽に対してのご要望は、
- フリースタンディングで、浴槽横には洗い場は設けない(隣のシャワーコーナーで体を洗う)。
- 浴槽の材質はプラスチック感がなく、重厚感があって手触りがよいものを。
- 追い炊きは必須ではないが、自動湯張りは欲しい(メゾネットなので、下階からボタン一つで湯張りしたい)。
- オーバーフローはは必須ではないが、あればなお良し。
とのことで、納期や価格も含めてバリエーションを揃えたものが上記のリストです。
リストの中から候補を絞っていったのですが、無名のメーカーの製品は、排水のことなど細かい仕様や図面を問い合わせても、そのようなものはないとの返答が多く、事前に図面で検証することができないことが分かり、最終的には2方向にエプロンが付いたModel-No. 700432(デュラビット)を選ぶこととなりました。
下階ではデザインを確認するために全室のCGを作りましたが、上階については時間的な制限と費用のことから、水回り空間だけのCGを作るととなったので、CGのための展開図を起こしました。
CGが出来上がったタイミングで、S様に同席をお願いしての他の部屋の仕上げを決める打合せを致しました。
シンプルな白はあまりお好みではないので、ある意味癖がある、質感があって色味も濃い目のクロスを見て頂きました。
モニターで浴槽と洗面カウンターの関係を見て頂きながら、壁紙やタイルの色と柄を変えてCGの確認をお願いしました。
天井の折り上げ部分に素材感がなくて寂しいのではとのことで、その場で金属製ルーバーと間接照明をつけ加えた完成バージョンのCGがこちらです。
完成したCGは昼夜を切り替えることができるようにして、こちらのURLを差し上げました。スタンドポイントは1か所ですが、360度見まわせるようになっています。